サケ・マス通信ブログ - サケ・マス類 種別で異なる放流方法と効果とは
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サケ・マス類 種別で異なる放流方法と効果とは2010/08/23 9:00 am
サケ・マスで大きく異なる放流方法と効果
求められる個別放流法による回帰率の評価
道総研水産研究本部 成果発表会
さけます内水面水試さけます資源部
宮腰靖之氏
サケ・マスTOPICS記事へ
多数の水産関係者が詰め掛け、最新の研究成果に耳を傾けていた
地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部(余市町・中央水試内)主催の「平成22年度水産研究本部成果発表会」が札幌市で8月6日に開催され、多数の水産関係者らが出席、最新の研究成果について聴講した。
研究報告の中から、さけます内水面水試さけます資源部の宮腰靖之氏が発表した「最近わかってきたサケ属3種の増殖効果の違い―資源変動と増殖効果に影響する要因解析―」の講演要旨を紹介する。
サケやカラフトマスは放流した河川に回帰する種苗放流魚の代表格。放流効果についてはこれまで、地域全体の来遊尾数に対する来遊尾数の比率(回帰率)によって評価が行われてきたが、これまで個別の放流群の回帰率調査の事例は必ずしも多くないのが現状だ。
川や放流群によって生残率は異なるため、サケやカラフトマスへの標識放流を行うことで個別の回帰時期や尾数を調べ、より詳しい放流効果に関する情報を得ることが重要となる。
効果的な放流技術の検討材料とすることを目的に調査を行った。
サケ、カラフトマス、サクラマスの中で最も放流効果が分かっているのがサクラマス。
日本海を主に春に水揚げがある点がメリットとなる魚だが、残念ながら減少傾向にあり、放流効果は上がっていない。
スモルトでの放流が最も効果的で大型放流魚の生残率が高いが、コスト面が問題。
数が少ないために放流魚の調査がしやすく、全体の15〜25%が放流魚ということが判明している。
全体の漁獲の7〜8割は野生魚ということで、この資源を守っていくことが大切となる。
サケは1980年以降、放流数が増加し漁獲も大きく伸長、大型サイズでの放流が効果的ということが分かっている。
ただ、現状では地域差があり、近年ではオホーツク海、根室方面で回帰率が平均を上回っている一方、日本海では平均を下回るようになっている。
この要因として放流時の沿岸高温化が関連している可能性がある。
オホーツク方面は冷たい水が温かくなる時期が早まることで逆にプラス傾向に働いているとも考えられる。最も放流技術が進んでいる種となるため、個別の回帰率を調べることが重要となる。
河川放流と海中飼育放流魚の回帰尾数の調査では、年によって差が大きいという結果が得られている。
カラフトマスは「広範囲回帰」
回帰調査事例の蓄積を
一方、「迷い魚が多い」と言われるカラフトマスについては、そう呼ばれる魚だけにサケに比べて個別群の回帰率を調べると全般に低く、放流効果を把握するのが難しい。
地域全体で放流について考えてくべき魚種だ。
耳石放流を行い放流効果について調べた結果、斜里町から放流した魚が北は枝幸町で、南は別海町で再捕されるなど、放流河川以外のかなり広範囲に回帰し母川回帰性が低いことが分かっており、種苗放流がその地域だけでなくより広い範囲の漁業資源に貢献していることが示唆された。さらに野生種がかなり多いとも推察された。
こうした調査結果からサケ属3種はそれぞれで放流方法、回遊範囲ともに異なるため、魚種ごとに回帰率の調査事例の蓄積が重要になる。
同時に回帰を左右する種苗性や沿岸環境の研究を並行するのも技術向上のためには大切な要素になる。
(週刊サケ・マス通信2010. 08月13日配信号に掲載)
求められる個別放流法による回帰率の評価
道総研水産研究本部 成果発表会
さけます内水面水試さけます資源部
宮腰靖之氏
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多数の水産関係者が詰め掛け、最新の研究成果に耳を傾けていた
地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部(余市町・中央水試内)主催の「平成22年度水産研究本部成果発表会」が札幌市で8月6日に開催され、多数の水産関係者らが出席、最新の研究成果について聴講した。
研究報告の中から、さけます内水面水試さけます資源部の宮腰靖之氏が発表した「最近わかってきたサケ属3種の増殖効果の違い―資源変動と増殖効果に影響する要因解析―」の講演要旨を紹介する。
サケやカラフトマスは放流した河川に回帰する種苗放流魚の代表格。放流効果についてはこれまで、地域全体の来遊尾数に対する来遊尾数の比率(回帰率)によって評価が行われてきたが、これまで個別の放流群の回帰率調査の事例は必ずしも多くないのが現状だ。
川や放流群によって生残率は異なるため、サケやカラフトマスへの標識放流を行うことで個別の回帰時期や尾数を調べ、より詳しい放流効果に関する情報を得ることが重要となる。
効果的な放流技術の検討材料とすることを目的に調査を行った。
サケ、カラフトマス、サクラマスの中で最も放流効果が分かっているのがサクラマス。
日本海を主に春に水揚げがある点がメリットとなる魚だが、残念ながら減少傾向にあり、放流効果は上がっていない。
スモルトでの放流が最も効果的で大型放流魚の生残率が高いが、コスト面が問題。
数が少ないために放流魚の調査がしやすく、全体の15〜25%が放流魚ということが判明している。
全体の漁獲の7〜8割は野生魚ということで、この資源を守っていくことが大切となる。
サケは1980年以降、放流数が増加し漁獲も大きく伸長、大型サイズでの放流が効果的ということが分かっている。
ただ、現状では地域差があり、近年ではオホーツク海、根室方面で回帰率が平均を上回っている一方、日本海では平均を下回るようになっている。
この要因として放流時の沿岸高温化が関連している可能性がある。
オホーツク方面は冷たい水が温かくなる時期が早まることで逆にプラス傾向に働いているとも考えられる。最も放流技術が進んでいる種となるため、個別の回帰率を調べることが重要となる。
河川放流と海中飼育放流魚の回帰尾数の調査では、年によって差が大きいという結果が得られている。
カラフトマスは「広範囲回帰」
回帰調査事例の蓄積を
一方、「迷い魚が多い」と言われるカラフトマスについては、そう呼ばれる魚だけにサケに比べて個別群の回帰率を調べると全般に低く、放流効果を把握するのが難しい。
地域全体で放流について考えてくべき魚種だ。
耳石放流を行い放流効果について調べた結果、斜里町から放流した魚が北は枝幸町で、南は別海町で再捕されるなど、放流河川以外のかなり広範囲に回帰し母川回帰性が低いことが分かっており、種苗放流がその地域だけでなくより広い範囲の漁業資源に貢献していることが示唆された。さらに野生種がかなり多いとも推察された。
こうした調査結果からサケ属3種はそれぞれで放流方法、回遊範囲ともに異なるため、魚種ごとに回帰率の調査事例の蓄積が重要になる。
同時に回帰を左右する種苗性や沿岸環境の研究を並行するのも技術向上のためには大切な要素になる。
(週刊サケ・マス通信2010. 08月13日配信号に掲載)