サケ・マス通信ブログ - 環境要因取り入れた新たなサケ来遊推定方法を紹介
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環境要因取り入れた新たなサケ来遊推定方法を紹介2010/08/17 8:30 am
新たなサケ来遊推定方法を紹介
環境要因取り入れた重回帰モデル
現行のシブリング法ともほぼ合致
さけますセンターの成果普及部会で報告
部会の様子
さけます研究開発、ふ化放流事業の効率的かつ効果的な推進を目的として「さけます成果普及部会」が8月4日に札幌市で行われた。
その中で、さけますセンター・資源研究室長の斎藤寿彦氏は秋サケ来遊予測の目的や手法を解説、さらに環境要因などを取り入れた新たな取り組みとして「重回帰モデル」を紹介した。
同モデルで今年度の来遊推測を行ったところ、現在、来遊予測に用いているシブリング法での推定値とほぼ同じ結果が得られたという。
斎藤氏は、同部会の資源情報の部で「平成22年度のサケ来遊資源情報」と題して報告。以下、講演要旨を紹介する。
<講演要旨>
水産資源の将来を考えるための基礎情報として
サケマス類などの水産資源は、現在から将来に向けての資源利用のあり方を決めることが大切といえ、それが資源管理にもつながっていく。
サケマスの来遊動向の推定は、水産資源が今後どのようになっていくかということを踏まえ対策を考えるための基礎情報であると考えている。
サケマスの来遊動向を推定する主な方法としては、(1)漁期前の試験操業による予測(2)卵・仔稚幼魚の採取量からの予測(3)過去の漁獲統計からの予測‐がある。
このうち(1)については日本に来遊する前のサケをベーリング海で試験操業を行っているが、現状規模の調査では毎年の来遊動向を把握することが難しい。また(2)の調査結果でも来遊動向を読み切ることが困難といえる。
現在、サケの来遊推定では(3)のシブリング法が一般に用いられている。これは異なる成熟年齢(回帰年齢)で来遊する同一年生まれ(年級群)のサケ資源(兄弟)の間に関連(正の相関)があることを利用した推定方法だ。
来遊推定法の不確実性を理解することも大切
昨年は全国で約6300万尾の漁獲があったが、漁業者、道府県の関係者、増殖団体などの協力を仰ぎ調査サンプリングを行い、全漁獲尾数の0.056%に相当する約3.5万尾で魚体の測定や年齢差などを採取した。
ただシブリング法では若年、高齢のサケの本当の関係性については不明であるため、サンプルはできるだけ無作為にサケを選び調査することを重視している。
シブリング法はその不確実性を理解することが大切で、推定値に加え、予測区間下限および上限を示すのが一般的だ。
2010年に関しては、シブリング法で若年魚と高齢魚の関係を直線(式)に当てはめて、当てはめ可能なものについては同法で推定。当てはめ不可能なものは過去5年の平均値で推定値を出した。さらに80%予測区間も計算している。
全国7地区での
サケ回帰変動率の
類似性に着目
続いて新たなる試みとして、環境要因などを使った来遊推定の試みを紹介する。
全国7地区で過去のサケ回帰率変動を調べたところ、オホーツクと根室、えりも以西と本州太平洋側の回帰率変動が似ていることが分かった。
放流時の沿岸環境が降海後の年級群の生き残りを大きく左右していると考えられる。
降海後の沿岸環境と回帰率の関係を検討した。オホーツクと根室は11月〜7月の水温、種苗サイズが回帰率変動に大きく影響を与えていることが分かってきた。
えりも以西と本州太平洋側は、日本沿岸海域の表面海水温5〜13度面積と回帰率に関係性が認められた。これら環境条件で、1976〜1998年級群の回帰率変動をある程度再現できた。
この方法に初回越冬期(12〜5月)の水温(西部北太平洋)も条件に加えて、「重回帰モデル」を作った。
年級群の回帰変動率をみると、オホーツクと根室では降海時の沿岸温度が高く、種苗サイズも大きい方がよく、越冬水温に関しては低い方が回帰率の向上に貢献しているらしいことが分かった。
えりも以西と本州太平洋側は、沿岸海水温面積がプラスに働いている。
重回帰モデルで今年の来遊推定を行ったところ、シブリング法による推定とほぼ同じ結果を得ることができた。
<講演要旨終わり>
なお同部会(平成22年度さけます関係研究開発等推進特別部会 さけます成果普及部会 主催・独立行政法人水産総合研究センター さけますセンター)では、資源情報の部で3テーマ、成果情報の部では3テーマが報告された。
資源情報の部 「平成20年度のサケ来遊数の減少をどのように考えるか?」(さけますセンター さけます研究部長・永沢亨氏)、「北太平洋におけるさけます資源および海洋環境」(北海道地区水産研究所 浮魚・頭足類生態研究室長・福若雅章氏)
成果発表の部 「サクラマスのまもり方・ふやし方」(さけますセンター 環境・生態研究室長・大熊一正氏)、「石狩川本流サケ天然産卵資源回復試験」(さけますセンター 技術開発室・技術普及係長 坂上哲也氏)、「サケ種卵に対するミズカビ対策の紹介」(さけますセンター 技術開発室 高橋悟氏)
(週刊サケ・マス通信 2010.8月6日配信号で掲載)
環境要因取り入れた重回帰モデル
現行のシブリング法ともほぼ合致
さけますセンターの成果普及部会で報告
部会の様子
さけます研究開発、ふ化放流事業の効率的かつ効果的な推進を目的として「さけます成果普及部会」が8月4日に札幌市で行われた。
その中で、さけますセンター・資源研究室長の斎藤寿彦氏は秋サケ来遊予測の目的や手法を解説、さらに環境要因などを取り入れた新たな取り組みとして「重回帰モデル」を紹介した。
同モデルで今年度の来遊推測を行ったところ、現在、来遊予測に用いているシブリング法での推定値とほぼ同じ結果が得られたという。
斎藤氏は、同部会の資源情報の部で「平成22年度のサケ来遊資源情報」と題して報告。以下、講演要旨を紹介する。
<講演要旨>
水産資源の将来を考えるための基礎情報として
サケマス類などの水産資源は、現在から将来に向けての資源利用のあり方を決めることが大切といえ、それが資源管理にもつながっていく。
サケマスの来遊動向の推定は、水産資源が今後どのようになっていくかということを踏まえ対策を考えるための基礎情報であると考えている。
サケマスの来遊動向を推定する主な方法としては、(1)漁期前の試験操業による予測(2)卵・仔稚幼魚の採取量からの予測(3)過去の漁獲統計からの予測‐がある。
このうち(1)については日本に来遊する前のサケをベーリング海で試験操業を行っているが、現状規模の調査では毎年の来遊動向を把握することが難しい。また(2)の調査結果でも来遊動向を読み切ることが困難といえる。
現在、サケの来遊推定では(3)のシブリング法が一般に用いられている。これは異なる成熟年齢(回帰年齢)で来遊する同一年生まれ(年級群)のサケ資源(兄弟)の間に関連(正の相関)があることを利用した推定方法だ。
来遊推定法の不確実性を理解することも大切
昨年は全国で約6300万尾の漁獲があったが、漁業者、道府県の関係者、増殖団体などの協力を仰ぎ調査サンプリングを行い、全漁獲尾数の0.056%に相当する約3.5万尾で魚体の測定や年齢差などを採取した。
ただシブリング法では若年、高齢のサケの本当の関係性については不明であるため、サンプルはできるだけ無作為にサケを選び調査することを重視している。
シブリング法はその不確実性を理解することが大切で、推定値に加え、予測区間下限および上限を示すのが一般的だ。
2010年に関しては、シブリング法で若年魚と高齢魚の関係を直線(式)に当てはめて、当てはめ可能なものについては同法で推定。当てはめ不可能なものは過去5年の平均値で推定値を出した。さらに80%予測区間も計算している。
全国7地区での
サケ回帰変動率の
類似性に着目
続いて新たなる試みとして、環境要因などを使った来遊推定の試みを紹介する。
全国7地区で過去のサケ回帰率変動を調べたところ、オホーツクと根室、えりも以西と本州太平洋側の回帰率変動が似ていることが分かった。
放流時の沿岸環境が降海後の年級群の生き残りを大きく左右していると考えられる。
降海後の沿岸環境と回帰率の関係を検討した。オホーツクと根室は11月〜7月の水温、種苗サイズが回帰率変動に大きく影響を与えていることが分かってきた。
えりも以西と本州太平洋側は、日本沿岸海域の表面海水温5〜13度面積と回帰率に関係性が認められた。これら環境条件で、1976〜1998年級群の回帰率変動をある程度再現できた。
この方法に初回越冬期(12〜5月)の水温(西部北太平洋)も条件に加えて、「重回帰モデル」を作った。
年級群の回帰変動率をみると、オホーツクと根室では降海時の沿岸温度が高く、種苗サイズも大きい方がよく、越冬水温に関しては低い方が回帰率の向上に貢献しているらしいことが分かった。
えりも以西と本州太平洋側は、沿岸海水温面積がプラスに働いている。
重回帰モデルで今年の来遊推定を行ったところ、シブリング法による推定とほぼ同じ結果を得ることができた。
<講演要旨終わり>
なお同部会(平成22年度さけます関係研究開発等推進特別部会 さけます成果普及部会 主催・独立行政法人水産総合研究センター さけますセンター)では、資源情報の部で3テーマ、成果情報の部では3テーマが報告された。
資源情報の部 「平成20年度のサケ来遊数の減少をどのように考えるか?」(さけますセンター さけます研究部長・永沢亨氏)、「北太平洋におけるさけます資源および海洋環境」(北海道地区水産研究所 浮魚・頭足類生態研究室長・福若雅章氏)
成果発表の部 「サクラマスのまもり方・ふやし方」(さけますセンター 環境・生態研究室長・大熊一正氏)、「石狩川本流サケ天然産卵資源回復試験」(さけますセンター 技術開発室・技術普及係長 坂上哲也氏)、「サケ種卵に対するミズカビ対策の紹介」(さけますセンター 技術開発室 高橋悟氏)
(週刊サケ・マス通信 2010.8月6日配信号で掲載)